作者: 機械伯爵
日時: 2002/9/8(22:33)
「P は Python の P <実戦編>」
 〜やるぞ作るぞRPG!〜


NP-8 戦闘システム

 前回、魔法かアイテムかモンスターか、というような話をしてい
たのですが、よく考えたら、戦闘システムの話をしていないのにそ
ういった各論が話せるわけない、ということにいきなり気付きまし
た。

 というわけで、もしかしたら少々退屈な話になるかもしれません
が、今回は戦闘システムのお話です。

 RPGというゲームは、ご存知のように様々な要素が入ったゲームで
すが、本来ウォー・シミュレーション・ゲームから発展してきただ
けあって、戦闘という要素は非常に大きなウェイトを占めます。

 よって、戦闘システムはゲームデザインのコアを占めることにな
り、多種多様なものが存在しますが、基本的には複数の判定の処理、
という形にまとめることができます。

 その中でも主な判定だけを列挙すると、以下の通りになります。

・行動順序決定
・攻撃命中/回避判定
・攻撃ダメージ算出

 位置関係などを詳しく扱うウォーシミュレーションなら、この他
にも様々な要因が加わってきます。

 ここで、ゲームデザイナが陥りやすい罠の一つに、複雑すぎるシ
ステム、というものがあります。

 たしかにシステムが簡素すぎると、表現に制約ができ、ゲームが
単調なものになってしまいます。

 しかし、複雑すぎるシステムは、データ部分を記述する手間を膨
大なものとし、さらにそのバランスを調整することを至難の業とし
ます。

 例え無事ゲームが出来上がったとしても、複雑なルールにプレイ
ヤーはうんざりするでしょう。

※プレイヤーの操作が複雑すぎるゲームシステムはもってのほかで
  すが、プレイヤーから隠されたパラメータがたくさんありすぎる
  ゲームというのも、私は問題だと思います。パラメータを隠すタ
  イプのデザイナは、そのようなシステムを「リアル」と呼び、そ
  れについては異論はありませんが、ゲームというものはルールが
  わかって初めてゲームである、という大前提を忘れているような
  気がしてなりません。情報が隠されすぎたゲームは、戦略を立て
  ることが困難となります。戦略を立てることができなければ、そ
  のゲームに対するプレイヤー自身のスキルも上昇しません。ゲー
  ムの本質を考えるなら、リアルは「ほどほどに」しておいたほう
  が良いと、私は考えています。

 また、データを作成する際に「作りやすい」システムを心がける、
というのも、ポイントの一つだと思います。

 例えば、日本のRPGでは、防具がダメージを「軽減する」という表
現方法を採用しているものが多く見受けられます。

 ところがWizardryなどでは、防具の効果を表すAC(Armor Class)は、
実際には「ダメージが通るか通らないか」すなわち、一種の命中判
定のように扱っています。

 リアルさを考えるなら、もしかしたら日本のRPGのほうが「それっ
ぽい」かもしれません。

 しかし、ここに意外な落とし穴があります。

 データ軽減式のRPGのデータを作成してみるとすぐわかるのですが、
モンスターデータを作るのが非常に困難になるのです。

 バランス面で、いくつのことを考慮しなければならないか、考え
てみれば判ります。

 Wizでは、命中率の基本値はHD(HitDice=Level)として、ヒットポ
イント(体力)と一括して扱われます。

 あとは、攻撃力と攻撃回数、そしてACを設定すれば、特殊能力を
持たない普通のモンスターデータは出来上がります。

<Wizardry式>
・HD(Level)
・攻撃力と回数
・AC

 ところが、防具による軽減を考えるシステムだと、命中率と回避
率、攻撃力と防御力、そしてヒットポイントをそれぞれ別々に設定
することになります。

<日本の標準的RPG>
・命中率
・回避率
・攻撃力(回数)
・防御力
・体力(ヒットポイント)

 Wiz式には3つのパラメータがありますが、基本的にはHDで大枠を
決めて、他の二つで微調整を行うことにより「大体このレベルのモ
ンスターはこれくらいのレベルのパーティの敵としてふさわしい」
といった、アタリがつけられます。

 ところが、日本の標準的RPGでは、どこにもその「基準」がありま
せん。

 そのため、自由度は大きいものの手間がかかる上、バランス取り
が非常に困難になります。

 それでも、手を加え尽くしたものはやはり面白いゲームになりま
すが、バランス取りに時間がとれなかったゲームは、結局敵が滅茶
苦茶に強かった弱かったりという理由で楽しめず「クソゲー」の称
号をいただくことになります。

 誤解して欲しくないのは、Wiz式を崇拝しているわけでなく、RPG
のデザインを行う際には、データ作成のことまできちんと考慮しな
ければならない、ということなのです。

 データ作成作業が、自分の想像力を刺激する楽しい作業になるか、
余計なことに頭を悩ませる辛い作業になるかは、システムデザイン
の段階で決まるのです。

 以上のことを踏まえて、Wiz(AD&D)の類似品のようなシステムを考
えていきたいと思います(笑)

 う〜ん、講釈もそろそろ飽きてきたし、そろそろスクリプトでも
書こうかな?

   機械伯爵