コーチ理論

コーチ理論

 北京オリンピックで対照的な日本の種目がありました。 1つはアメリカに2度負けながらも、決勝戦で勝って優勝した女子ソフトボール、 もう1つは優勝を義務づけられながらも苦戦続きで予選リーグ4位、決勝トーナメントでも1勝もできなかった男子野球……です。

 ソフトボールの勝ち投手となった上野由岐子さんは前日延長戦二試合を投げ抜き、身体の疲労はピークにあったと思われます。 けれども、小学3年生の時お父さんが庭につくった的を目がけた投球練習、風呂上がりのシャドーピッチングを欠かさなかったという「練習の虫」精神は「決勝で米国に投げるということをずっと夢にして」おり、誰もがプレッシャーで逃げ出したくなるような決勝戦をむしろ楽しんで投げていたといいます。

 これに引き換え、野球チームはこう言っては失礼ですが、アジア予選を勝ち抜いた仲間でオリンピックを勝ち取ろうという星野監督の浪花節野球で、不調の選手、怪我の選手を多数かかえ、標榜した少ないチャンスを点に結びつけるスモールベースボールもほとんどできず、ある意味当然のごとく敗退しました。

 明暗を分けたのは、選手に伸び伸びと実力を発揮させることができる環境づくり、会話、指導ができていたかどうかというコーチングの部分だと思います(敗因の分析はもちろん技術、制度その他いろいろあると思います。この文は野球の技術論ではないので、受験生にも通じるメンタル面のみ取り上げています)。

 優勝した女子ソフトボールチームの基礎を作った元監督・宇津木妙子さんの紹介ページには率先して選手を鍛え、試合のプレッシャー以上のプレッシャーを常に体験させるという意味のスパルタ式コーチングの片鱗が見えます。その宇津木さんも金メダルを取った後は号泣し、もう「ソフトの監督はやめてもいい」と言われたといいます。 決勝トーナメントを投げぬいた上野投手も偉かったけれども、この、素晴らしいコーチがいたからこそ、日本チームは金メダルを獲得できたのではないでしょうか。

 受験は華々しくマスコミに取り上げられるオリンピックとは違い、一人一人の地味な戦いです。 けれども、その結果が受験生のその後の人生で非常に大きな意味をもってくるという点では、オリンピックと変わりません。 実力を出しきれず敗退し、悔し涙にくれた野球のような指導ではなく、実力以上を発揮して光り輝いたソフトのような指導をぜひとも目指したいと思います。

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